【記事投稿日】2026年5月27日
【筆者】岡田匡史(国家資格・鍼灸師)
不妊の方を診ていると、手足や骨盤が冷たい・お腹がコチコチに硬いという方が少なくありません。
これらは東洋医学でいう「血虚」や「瘀血」のサインであることが多く、子宮や卵巣への血流が悪くなっている状態を現しています。
このページでは、そういった状態に有効なツボ(三陰交・次髎・中封)について鍼灸師の立場からお伝えします。
不妊でお悩みの方は、こちらのページもあわせてご覧ください。
▶ 妊娠しやすい体づくりについて
第一弾!不妊にお勧めのツボ(三陰交)
三陰交とはどんなツボか

三陰交は、足首にあるツボです。
このツボは、足の少陰腎経・足の太陰脾経・足の厥陰肝経と呼ばれる3つの経絡が交わります。
3つの経絡が交わるので、腎臓・脾臓・肝臓の働きを一つのツボで改善できる優れものです。
「このツボが、なぜ不妊と関係があるの?」と疑問に思う方もいると思います。順番にお答えします。
一つ目。腎と不妊の関係です。

東洋医学では、「腎は精を蔵する」という言葉があります。
精とは、発育・成長・生殖などの生命活動に必要なエネルギーの基礎物質のことです。
腎の働きが悪くなると、生殖にトラブルが発生するというわけです。
▶腎について詳しく知りたい方は、「東洋医学で考える腎の働き」をご覧ください。
【参考】
腎が弱ると、月経の異常、おりものの異常、不妊症や不感症、また妊娠・出産にまつわる様々な異常などの原因となります。
<引用:中医学ってなんだろう(東洋学術出版)>
2つ目は、脾です。

東洋医学では「脾は、後天の精を主る」と言われています。
食べた食物を消化・吸収してエネルギーに変える働きです。
ダイエットや激しいスポーツで生理が止まることがあるように、血を作れなかったり消耗したりすると「血虚(けっきょ)」と呼ばれる状態になります。
思い悩み過ぎても、脾の働きが落ちて血虚になる場合があります。
血虚とは、血が少ない状態のことです。血が少なければ、子宮内膜はフカフカになりません。お腹で赤ちゃんを育てることもできません。
▶脾について知りたい方は、「東洋医学で考える脾の働き」をご覧ください。
3つ目は、肝です。

東洋医学では「肝は疏泄を主る」という言葉があります。
気・血をすみずみまで行きわたらせる働きです。この働きが落ちると気・血の流れが悪くなり、子宮や卵巣への血流も悪くなります。
▶肝について知りたい方は、「東洋医学で考える肝の働き」をご覧ください。
この理由から、三陰交は腎・脾・肝の3つに同時にアプローチできる、不妊治療において重要なツボです。
【参考】
三陰交(さんいんこう)
[主治] 腹部膨満、腹鳴、下痢便、消化不良、月経不順、不正子宮出血、帯下、子宮下垂、無月経、月経痛、不妊症、難産、遺精など。
引用:鍼灸経穴辞典(東洋学術出版)
血虚タイプの方へ
不妊症の方には、手足や骨盤が冷たくて冷え症がある方が多いです。
冷え症の原因にもいろいろあって、体質的な「冷え性」の方。
自律神経・ホルモンの乱れ・瘀血・低血圧・貧血によるものなどの「冷え症」があります。
その中で、東洋医学で「血虚」という状態の方には、三陰交が特に有効です。
血虚の方は、体に与える「血」が不足した状態。
肌や髪につやがない・爪が割れやすい・めまいなどの症状が出ることがあります。
脈診でみる血虚のサイン
専門的な話になりますが、血虚の方の脈をみると、
- 細脈(さいみゃく)
- 濇脈(しょくみゃく)
- 芤脈(こうみゃく)
と呼ばれる脈の状態を現しています。
①細脈は、
名前のように糸のように細い脈です。血液の流れが少ない状態を現します。
②濇脈は、
骨盤の循環する血液が少ない方や瘀血のある方(ドロドロ血液)に現れやすい脈です。
③芤脈は、
ネギを押すような中身(血)がない脈です。
東洋医学で考える「血」は、運動をしたり・物を見たり・頭を使ったりする時に使われます。
また、女性の場合は、毎月子供を作る準備のために「血」を使って「子宮」という赤ちゃんのベッドを作ります。

そして、妊娠すると「血」によって胎児を育てます。
もし、この血が少なかったらどうでしょう?
子宮という赤ちゃんのベッドが作れません。
妊娠しても血が少なければ、赤ちゃんを育てられません。このような身体の状態では、妊娠することが難しくなる可能性があります。
不妊の原因が全て血虚というわけではありませんが、血虚の方には三陰交を使うと血が増えるので有効なツボです。
ツボの見つけ方
三陰交は、内踝(うちくるぶし)から指4本分上にあります。指四本分というのは、人差し指から小指までの幅です。
細かくいうと、指四本分上にある脛(すね)の骨と肉の間にあります。ここが三陰交です。ここに台座灸を行います。
【参考】
取穴部位:内果の上3寸、脛骨内側縁の骨際に取る。
<引用:経絡経穴概論(医道の日本社)>
第二弾!不妊にお勧めのツボ(次髎)

次髎とはどんなツボか
不妊でお悩みの方には、足が冷たい・腰や骨盤が冷たい方がいらっしゃいます。
このような症状が出ている方の場合、卵巣の機能が衰えて骨盤内の循環が悪くなっている可能性があります。骨盤内の循環が悪いと、子宮や卵巣に栄養の供給ができません。
このような時には、骨盤の上にある**次髎(じりょう)**と呼ばれるツボを使います。
このツボは、副交感神経の働きを高め、骨盤内の循環を改善するのに有効です。
【参考】
上髎・次髎・中髎・下髎という、いわゆる「八髎穴」は、骨盤内臓の虚血状態の時に非常によく効く経穴であり、骨盤内臓部の循環代謝が悪い、冷え症、不妊症、生理痛、腰痛症等の時には、ここに鍼または灸頭鍼や施灸をすることは大変効果がある。<引用:鍼灸臨床 新治療法の探求(医道の日本社)>
ツボの見つけ方
骨盤の後ろを触ると、上後腸骨棘と呼ばれる骨の出っ張りを触れます。
この骨の出っ張りの下から、やや内側を触ると凹みがあります。この凹みの場所が次髎です。足が冷たい方・腰や骨盤が冷たい方は、このツボに台座灸を行うとよいでしょう。
【参考】
次髎(じりょう)
取穴部位:第2後仙骨孔部に取る
<引用:経絡経穴概論(医道の日本社)>
第三弾!不妊にお勧めのツボ(中封)

中封とはどんなツボか
本来、お腹は「蒸かしたてのまんじゅう」のような状態が理想です。
しかし、不妊でお悩みの方の中には、お腹がコチコチに硬くなっている方がいます。
特に、お臍(へそ)から斜め下付近が硬い方は、瘀血(おけつ)といって、血液の滞りを現します。
「血液がドロドロで流れが悪くなっていますよ!」という体のサインです。
このような状態になっていると、骨盤内の血液循環が悪くなっています。
そうなると、子宮や卵巣の血流も悪くなるので、不妊と関係があると考えられます。
【参考】
瘀血は病理産物であり、致病要素ともなる。寒・熱・虚・実・外傷などは、どれも瘀血の原因となり、衝脈・任脈・胞宮・胞脈を瘀滞して不通となると妊娠できない。<中医婦人科学から引用>
しかし、ご安心ください。
この血液ドロドロに有効なツボがあります。
それが、中封(ちゅうほう)です。
このツボを使うと、腹部に滞っていた血液が流れ出して、お腹が柔らかくなっていきます。
実際に、鍼で中封に刺鍼すると、その場で柔らかくなることもあります。
また、敏感に変化を感じる方だと、施術中に「お腹がすっきりした!」と教えてもらうこともあります。
瘀血について詳しくはこちら:瘀血(おけつ)を知る
ツボの見つけ方
中封は、足首の内側にあります。
足首を見ると、内果と呼ばれる骨の出っ張り(うちくるぶし)があります。
そこから前方に向かうと、太いスジが見えます。そのスジの内側が「中封」です。
瘀血のある方ですと、この中封のツボを押すと痛みを感じることが多いです。反応が両側にあれば間違いないので、このツボに台座灸を行うとよいでしょう。
【参考】
[中封の位置] 内果前一寸。前脛骨筋腱の内側下際の陥凹部に取る。
(一寸は、親指の幅)
経絡経穴概論(東洋療法学校協会)
よくある質問

三陰交・次髎・中封は、自分でお灸をしても大丈夫ですか?
市販の台座灸(せんねん灸など)であれば、ご自宅でも行うことができます。
しかし、鍼灸師に身体の状態を診てもらい、
あなたの体質にあったツボにお灸をする方が、より効果的なことがあります。
不妊の原因はすべて血虚ですか?
いいえ、血虚は不妊の要因のひとつです。
瘀血・腎虚・骨盤内循環の低下など、複数の原因が重なっていることが多く、個人によって異なります。
次髎は冷えがない人には使いませんか?
骨盤内の循環が悪い・生理痛・腰痛がある方にも使うツボです。
冷えの有無だけでなく、脈診・腹診・ツボの反応をみて総合的に判断します。
中封を押すと痛いのですが、瘀血があるということですか?
瘀血のある方は、中封を押すと痛みを感じることが多いです。ただし、確定的な判断は腹診などをあわせて行う必要があります。
当院でのご予約について

三陰交・次髎・中封は、どのツボを使うかは脈診・腹診で判断しています。
同じ「不妊」でも、血虚なのか・骨盤の冷えなのか・瘀血なのかによって、アプローチが変わるからです。
セルフケアとあわせて、根本から妊娠しやすい体づくりをご希望の方は、おかだ鍼灸院にお任せください。
来院をご希望の方は、ご予約の流れを以下のページでご確認いただけます。
【参考文献】
- 経絡経穴概論(医道の日本社)
- 鍼灸経穴辞典(東洋学術出版)
- 中医学ってなんだろう(東洋学術出版)
- 鍼灸臨床 新治療法の探求(医道の日本社)
- 中医婦人科学
- 臨床中医臓腑学(医歯薬出版)

