【記事改定日】2026年5月26日
【筆者】岡田匡史(国家資格・鍼灸師)
患者さんの中には、施術を終えると
「もう終わりですか?」
「鍼を刺してすぐ抜くのですか?」
「以前、鍼を受けた時はズーンとした感覚がありましたが…」
「お灸が熱くなくて、本当に効くんですか?」
とお話しいただくことがあります。
おそらく、以前は60分・70分・90分などのコースを受けていた方や、
太くて長い鍼で「ズーン」と響く施術を受けていた方なのかもしれません。
お灸は「熱い方が効く」と思っていらっしゃる方もいます。
ただ、私(鍼灸師)が長年、鍼灸治療を続けてきた経験では、
自律神経を整える目的で鍼灸を行う場合、「弱い刺激」の方が合う方が多いと感じています。
この記事では、その理由を臨床経験をもとにお伝えします。
強い刺激・弱い刺激とは

鍼灸治療の刺激には、大きく分けて「強い刺激」と「弱い刺激」があります。
強い刺激としては、次のようなものがあります。
- 長時間の施術(60分・70分・90分など)
- 太い・長い・深い鍼
- ズーンと響く感覚
- 熱いお灸
弱い刺激としては、次のようなものがあります。
- 短時間の施術
- 細い・短い・浅い鍼
- 刺さない鍼(てい鍼)
- 熱くないお灸
どちらが良いかは、体質や症状によって変わります。
ただ、自律神経の不調でお悩みの方には、体への負担をできるだけ少なくする
施術の方が合うことが多いと感じています。
症例:コロナ後遺症と「刺さない鍼(てい鍼)」

以前、おかだ鍼灸院に来られている方の中に、新型コロナに感染してから1年3か月ほど、
息苦しさ・動悸・左背中の痛みで困っている男性がいました。
病院で検査を受けたところ「異常なし」と言われたそうです。
しかし、寝ていても起きていても息苦しく、動くと悪化するため
家から出られない状態が続いていました。
漢方を服用してから「1日中苦しい」から「数時間おきに数時間続く」という
変化はあったものの、根本的には改善していませんでした。
実際に来院された時は、ちょうど息苦しい時間帯にあたりました。
顔色は悪く、舌をみると紫色で、胸を押さえていました。

脈・お腹・ツボの反応を確認すると、
などの反応がありました。瘀血について詳しくはこちら
私としても、なんとか良くしたいと思って施術をしましたが、
初回は全く変化がありませんでした。
2回目に来院された時も「特に変化はない」とのことでした。
そこで、この方の状態には通常の刺激が合っていないと判断し、
2回目の施術から「てい鍼(刺さない鍼)」に変更しました。

施術を重ねるうちに少しずつ状態が変わり、3か月ほどすると
「以前のような息苦しさが減ってきました」とお聞きしました。
紫色だった舌も変化していたため、
血流の状態にも変化が出てきたのではないかと感じています。
なぜ強い刺激が自律神経の不調に向かないことがあるのか
自律神経の不調でお悩みの方は、もともとストレスによって身体が疲弊している状態です。
ストレスを起こすストレッサーは、精神的なものだけではありません。
- 精神的ストレッサー:対人関係、精神的苦痛
- 物理的ストレッサー:騒音、気圧の変化
- 化学的ストレッサー:大気汚染、栄養不足
- 生物的ストレッサー:病原菌、慢性的な炎症
など、さまざまな種類があります。

「痛いけど我慢しなければ」と思いながら受ける施術や、
「熱いけど、効くためには耐えなければ」と我慢するお灸は、
それ自体が身体への負担(ストレッサー)になることがあります。
もともとストレスで自律神経が乱れているところに、
さらに強い刺激を加えてしまうことになりかねません。
当院での施術の考え方

自律神経の不調で来院される方が多いため、
当院では身体への負担をできるだけ少なくした施術を大切にしています。
施術時間は30分前後を目安にしています。
お話が長くなった場合でも、40分以内にとどめることが多いです。
鍼は、細い・短い・浅いものを中心に使用しています。
体の状態によっては、「てい鍼」と呼ばれる刺さない鍼を使うこともあります。
お灸も、「心地よい」または「ほとんど感じない」程度の熱感で行っています。
「熱くないと効かないのでは?」と思われる方もいますが、
心地よい程度の刺激でも、身体が良い方向に向かうことがあります。
自律神経の不調についての詳しい説明はこちらのページをご覧ください。
強い刺激が苦手だった方にとって、低刺激の鍼灸は一つの選択肢になると思います。
当院での施術をご希望の方は、以下のページをご確認ください。
強い刺激が合う方もいる
ただし、強い刺激がすべて悪いという意味ではありません。
自律神経の不調がある方でも、強い刺激を「体に良いもの」として
受け取れる方であれば、刺激量が多くても問題ない場合があります。
好きな仕事なら長時間働いても負担に感じない方がいるのと、
少し似ているかもしれません。
強い刺激が合う方は、そのような施術を行っている鍼灸院を
選ぶのも一つの方法だと思います。

