東洋医学で考える『肺』とは

東洋医学で考える肺のイラスト

【記事改定日】2026年1月30日
【筆者】岡田匡史(国家資格・鍼灸師)


秋になると不調が出やすいのは、なぜでしょうか?

喉の不調を鍼灸院に相談しにきた女性

秋風が吹くと、
なぜか理由もなく悲しくなったり、肌がカサカサしてきたり、
咳や鼻炎が長引くことはありませんか?

また、

  • 皮膚が乾燥する
  • 咳が出る
  • 鼻炎・鼻水が出る
  • 喉が痛くなる
  • 腱鞘炎で親指が痛む

こうした症状に心当たりがある方も多いと思います。

これらは、東洋医学で考える『肺』や『肺の経絡』と深く関係しています。


東洋医学の「肺」と西洋医学の「肺」は何が違うのか

東洋医学と西洋医学の肺の違いを説明する鍼灸師

西洋医学の肺と、東洋医学で考える肺は、
似ている部分もありますが、まったく同じ働きではありません。

その理由のひとつが、歴史的背景です。

今から200年以上前、杉田玄白がオランダ医学の解剖書を翻訳し、
『解体新書』を発行しました。

その際、日本で使われていた東洋医学の
「五臓六腑」の名称を、西洋医学の臓器に当てはめて翻訳しました。

その結果、

名前は同じでも、働きは同じではない

という混乱が生まれました。

東洋医学の「肺」は、
単なる呼吸器ではなく、全身の気・皮膚・感情まで含めた概念として考えられています。


東洋医学で肺の不調を見つける方法

五行色体表から見る肺の不調

五行色体表と肺の関係を示した図

東洋医学では、万物を
木・火・土・金・水の5つの要素に分類します。

この考え方をまとめたものを、
五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)といいます。

肺は「金」の性質を持ち、次のような特徴があります。

  • 季節:秋
  • 感情:悲しみ・憂い
  • 関係する器官:鼻・皮膚
  • 好みやすい味:辛いもの

そのため、肺が弱ると、

  • 秋になると体調が悪くなる
  • 悲しい気分になりやすい
  • 鼻水・鼻づまりが出やすい
  • 皮膚が乾燥する

といった症状が現れやすくなります。


お腹(腹診)で肺の不調を見つける

東洋医学では、お腹の反応から
五臓(肝・心・脾・肺・腎)の不調を見つけます。

理想的なお腹は、
蒸かしたての饅頭のように、ふっくら柔らかい状態です。

しかし、不調のある方のお腹は、

・力なく軟弱
・押すと痛む
・部分的に硬い

といった反応がみられます。

肺の不調が出やすい腹診ポイント

腹診でお臍の右側を確認し肺の不調をみるポイント

肺に不調がある場合、
お臍の右側を指腹で軽く押すと、

  • 痛みを感じる
  • 硬さを感じる
  • 拍動を感じる

ことがあります。

このような反応は、
肺の働きが弱っているサインのひとつです。


東洋医学で考える肺の働き

肺は「憂い・悲しみ」と関係する

東洋医学で考える肺の感情(憂い・悲しみ)を表した女性

五行色体表では、
肺がつかさどる感情は「憂い・悲しみ」です。

肺が弱ると、
気分が落ち込みやすくなり、

逆に、
悲しみや憂いが続くことで、
肺の働きが弱ってしまうこともあります。


肺は鼻とつながっている(鼻に開竅する)

肺と鼻の関係を示した女性のイラスト

東洋医学では、
肺は鼻に「開竅(かいきょう)する」
=鼻を通じて外界とつながると考えます。

肺が正常であれば、
鼻の粘膜は適度に潤い、

しかし肺が弱ると、

・鼻水が出る
・鼻が乾燥する
・鼻づまり
・においが分かりにくくなる

といった症状が現れます。


肺は皮膚と免疫を守る

肺の皮膚や免疫との関係を示した図

肺は、
全身の皮膚や立毛筋と関係し、

・体温調節
・皮膚への栄養供給
・外邪(寒さ・風・湿気)から守る

バリア機能(衛気)を担っています。

肺が弱ると、

・風邪をひきやすい
・悪寒や発熱
・自汗
・皮膚の乾燥やトラブル

が起こりやすくなります。


肺は「気」をつくり、巡らせる

肺の気の働きを示した図

肺は呼吸によって空気を取り込み、
体のエネルギーである「気」を作ります。

  • 宗気:呼吸や血流を支える
  • 営気:体を養う栄養
  • 衛気:体を守るバリア

肺が弱ると、

  • 呼吸が浅い
  • 声に力がない
  • 疲れやすい

といった変化が現れます。


肺の経絡は親指までつながっている

肺の経絡が腕を通り親指までつながることを示したイラスト

肺の経絡は、
肩から腕を通り、親指の先まで流れています。

そのため、肺の働きが弱ると、

  • 手首の腱鞘炎
  • ばね指
  • 親指の痛み

といった症状が出ることがあります。


肺の不調に対する鍼灸治療

咳や喉の違和感に対する鍼灸治療の様子

慢性的な、

  • 咳や喉の違和感
  • 鼻炎・副鼻腔炎
  • 皮膚の乾燥
  • 親指や手首の痛み

が続いている場合、
肺や肺の経絡に問題が起きている可能性があります。

当院では、
症状だけを見るのではなく、

腹診や脈、皮膚の状態を確認し、
肺の働きそのものを整える施術を行います。

肺が整うことで、

  • 深い呼吸がしやすくなる
  • 疲れにくくなる
  • 風邪や乾燥に負けにくくなる

といった変化が期待できます。


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参考文献

  • 東洋医学概論(医道の日本社)
  • わかりやすい臨床中医臓腑学(医歯薬出版)
  • 中医学ってなんだろう(東洋学術出版)

おかだ鍼灸院 院長。

東洋医学(脈診・腹診)を中心に、
自律神経の不調や不妊(妊活)のお悩みを
26年以上臨床でサポートしています。

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