【記事投稿日】2026.10.11
【筆者】岡田匡史(国家資格・鍼灸師)
10数年前のことですが、膝の痛みを訴えて来院された女性がいました。
膝を確認すると、目立った腫れはありませんでしたが、ややO脚傾向があり、歩き始めや階段の上り下りで痛みが出るとのことでした。
整形外科には行かれていなかったため、変形性膝関節症と診断されていたわけではありませんが、症状からは変形性膝関節症なども考えられる状態でした。
当院では、膝が痛いからといって、膝だけに施術を行うわけではありません。
身体全体の状態を確認しながら施術を行いますが、膝の状態によっては、膝周辺にお灸をすることもあります。
この方には、当院での施術だけではなく、自宅でもお灸をしていただくことにし、ツボとお灸のやり方をお伝えしました。
その後、数か月施術を続ける中で徐々に膝の痛みを訴えなくなり、いつしか来院されなくなりました。
1年半後、再び同じ膝が痛くなった

それから1年半ほど経った頃、その方が再び来院されました。
お話を聞くと、
「また膝が痛くなったので、以前教えてもらったところにお灸をすればよいと思ってやっていたら、かえって痛くなってしまった」
とのことでした。
膝を確認してみると、以前とは状態が違っていました。
今回は膝に関節液が溜まり、腫れがみられる状態でした。
膝に水が溜まっている時には、関節の中で滑膜炎などの炎症性の変化が起きていることがあります。
とくに腫れや熱感など炎症が強くみられるところに、その状態に合わない熱刺激を加えると、かえって痛みが強くなることがあります。
これは、腫れて炎症を起こしているところを強く揉んだり、叩いたりすることを避けるのと同じです。
この方の場合も、以前は腫れのない膝の痛みでしたが、再来院された時には膝の状態が変わっていました。
それにもかかわらず、以前と同じように患部へお灸を続けていたため、かえって痛みを強くしてしまった可能性が考えられました。
同じ「膝の痛み」でも状態はいつも同じではありません

患者さんに自宅でのお灸をお伝えすると、
「一度教えてもらったツボだから、これからもずっと使ってよい」
「また同じところが痛くなったから、以前と同じツボにお灸をすればよい」
と思われる方がいらっしゃいます。
しかし、身体の状態はいつも同じではありません。
同じ膝の痛みであっても、
- 腫れがない
- 関節液が溜まっている
- 熱をもっている
- 急に痛くなった
- 長期間続く慢性的な痛みである
など、その時々で状態は違います。
そのため、以前は合っていたセルフケアが、現在の身体にも合っているとは限りません。
ツボも、その時の身体の状態をみて選びます

鍼灸では、
「膝が痛いから、このツボ」
と、いつも同じ場所を使うわけではありません。
当院では、痛みのある場所だけでなく、脈やお腹、手足のツボの反応、筋肉の緊張なども確認しながら、その時の身体の状態に合わせて施術を行っています。
自宅で行うお灸についても同じです。
一度教わったツボが、何年経ってもそのまま自分に合っているとは限りません。
とくに、
- 以前とは痛み方が違う
- 腫れてきた
- 熱をもっている
- 急に痛みが強くなった
- お灸をしているのに、かえって痛くなってきた
という場合には、自己判断でそのまま続けないことが大切です。
また、膝が急に大きく腫れた、赤く熱をもっている、強い痛みがある、発熱を伴うといった場合には、鍼灸だけで判断せず、整形外科など医療機関で原因を確認することも必要です。
セルフ灸は、時々身体の状態を確認しながら

自宅でのお灸は、身体の状態に合っていれば、日々の体調管理に利用できる方法の一つです。
ただし、
「以前教えてもらった場所だから大丈夫」
「同じ場所が痛いから、前と同じお灸をすればよい」
とは限りません。
身体は時間とともに変化します。
同じ症状であっても、その原因や状態まで同じとは限らないからです。
セルフ灸を続けている方も、症状や身体の状態が変わった時には、自己流で続けるのではなく、一度鍼灸師に身体の状態を確認してもらうことが大切だと考えています。
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