東洋医学で考える『心』とは

東洋医学と西洋医学で考える心の違いのイラスト

【最終更新日】2026年1月26日
【筆者】岡田匡史(国家資格・鍼灸師)


「検査では異常がないと言われたけれど、動悸がする」
「夜なかなか眠れない」「理由もなく不安になる」

こうした更年期世代に多い不調は、
東洋医学では『心(しん)』の乱れとして考えます。


東洋医学の『心』と西洋医学の『心』は、似て非なるもの

鍼灸院で動悸・不眠を相談する患者と鍼灸師

更年期の女性は、ホルモンバランスの変化によって自律神経が乱れ、

  • 動悸
  • 不眠
  • 汗をかきやすい

といった症状が現れることがあります。

これらは、東洋医学で考える『心』の不調と深く関係しています。

また、

  • 舌が痛い(舌炎)
  • 舌が動かしづらい
  • うわごとを言う
  • 喜びすぎる(テンションが高すぎる)
  • 苦い味の物を好む

といった症状も、同様に「心」からのサインと考えます。

心は血液を循環させる原動力という点では、西洋医学の心臓と似ていますが、
働きはまったく同じではありません。


なぜ「心」の意味が混乱したのか

東洋医学の心について説明する鍼灸師

今から200年以上前、杉田玄白がオランダ医学の解剖書を翻訳し、
『解体新書』が発行されました。

その際、日本で使われていた東洋医学の「五臓六腑」の名称を、
オランダ医学の臓器名に当てはめて翻訳しました。

その結果、
「名前は同じだが、働きは違う」
という混乱が生まれることになりました。

ただし、名称の違いがあっても、
東洋医学が数千年にわたり
「心の動き」と「身体の症状」を一体として診てきた事実は変わりません。


東洋医学による『心』の不調を見つける方法

五行色体表で見つける

東洋医学の五行色体表と心の関係を示した図

東洋医学では、万物を
木・火・土・金・水
という5つの要素に分類します。
これをまとめたものが五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)です。

五行色体表から見た「心」の特徴は次の通りです。

  • 五行:火
  • 五味:苦
  • 五液:汗
  • 五季:夏
  • 五主:血脈
  • 五志:喜
  • 五根:舌

これらの特徴が強く現れている場合、
東洋医学では「心の不調」が関係していると考えます。

心の不調セルフチェック

  • 動悸がする
  • 寝つきが悪い、夜中に目が覚める
  • 汗をかきやすい、または汗が出にくい
  • 舌がピリピリする、味が分かりにくい
  • 気分が落ち着かず、テンションが上がりすぎる

※2つ以上当てはまる方は、「心」の不調が関係している可能性があります。


腹診で見つける

腹診で五臓の不調が現れる反応点

東洋医学では、腹診(ふくしん)によって五臓
(肝・心・脾・肺・腎)の状態を確認します。

  • お臍の周り:脾
  • お臍の右:肺
  • お臍の左:肝
  • みぞおち:心

心の弱りがある方は、
みぞおちを軽く押すと痛みを感じたり、硬く張っていることがあります。
これは
心実(しんじつ:エネルギーが過剰で詰まっている状態)です。

逆に、力なく軟らかい場合は
心虚(しんきょ:エネルギーが不足し、力尽きている状態)と考えます。


東洋医学で考える『心』の働き

心は、精神活動の中心

東洋医学でいう心の精神活動を表したイラスト

東洋医学には
「心は神を蔵す」
という言葉があります。

「神」とは、
知覚・記憶・思考・意識・判断など、
現代でいう脳の働きに近い精神活動を指します。

東洋医学では、
血(けつ)は神が休まる「居場所」と考えます。
心の血が不足すると、神が落ち着かず、夜中に目が覚めやすくなります。


心は、血液循環を主る

心の働きによる血流を説明する図

東洋医学では
「心は血脈を主る」
と言われ、血液を循環させ全身を養います。

血を生み出す土台は
▶東洋医学で考える『脾』について
と深く関係しています。


心は、舌の運動・味覚を主る

心の状態が舌に表れている図

「心は舌に開竅(かいきょう)する」と言われ、
舌の運動や味覚と深く関係しています。


心は、汗と深く関係する

東洋医学で心の不調と関係する発汗のイメージ

五行色体表の「五液」では、
心は汗と関係しています。


心の不調による鍼灸治療

腹診で心実と腎虚を表した図

更年期の女性は、加齢により
腎虚(水が不足した状態)となり、
相対的に
心実(火が強い状態)になりやすい傾向があります。

腎について詳しくは
東洋医学で考える『腎』とは

これは、
火を消す水が足りないため、火が上に燃え上がってしまう状態
と考えると分かりやすいでしょう。

感情のコントロールには
東洋医学で考える『肝』について

呼吸や胸のつかえ感には
東洋医学で考える『肺』について

も深く関係しています。


五臓全体から心を整えるという考え方

心の不調は、心だけの問題ではありません。

五臓は互いに助け合い、抑制し合いながら、
身体と心のバランスを保っています。

▶東洋医学で考える「五臓」と体調不良の関係

そのため、動悸や不眠といった症状も、
一つの臓だけでなく、全体のバランスから捉えることが大切になります。


■ 参考文献

  • 中医学ってなんだろう(東洋学術出版)
  • 中医学の仕組みがわかる基礎講義(医道の日本社)
  • 臨床中医臓腑学(医歯薬出版株式会社)
  • 東洋医学概論(医道の日本社)

おかだ鍼灸院 院長。

東洋医学(脈診・腹診)を中心に、
自律神経の不調や不妊(妊活)のお悩みを
26年以上臨床でサポートしています。

岡田匡史(国家資格・鍼灸師)をフォローする