東洋医学で考える『腎』とは

東洋医学で考える腎の働きと体調不良の関係を解説したイメージ

【筆者】岡田匡史(国家資格・鍼灸師)


「腎が弱っていますね」と言われて、不安になったことはありませんか?

鍼灸院で腎の弱りについて説明を受ける女性

鍼灸院で
「腎が弱っていますね」
「腎の働きが落ちていますよ」
と説明を受けて、

「えっ?腎臓が病気なんですか?」
と、不安になった方もいらっしゃると思います。

ご安心ください。
鍼灸師が言う『東洋医学の腎』と、病院で検査される『腎臓(臓器)』は、同じ名前でも意味がまったく違います。

この記事では、
「腎=腎臓の病気ではない」という点を大前提に、
東洋医学で考える『腎』について、できるだけ分かりやすくお伝えします。


腎が弱ると、こんな不調がみられることがあります

めまいや体調不良に悩む女性

私は、鍼灸院に来られた方への説明の中で、
『腎』が弱っていることで、

・めまいが出ている
・不安感が強く出ている
・腰痛が出ている
・動悸が出る
・のぼせやすい
・足腰が冷えやすい
・不妊に影響している
・耳の聞こえが悪くなっている

といったお話をすることがあります。

しかし、その説明を受けた方の中には、
「腎臓が悪いということですか?」と、
強い不安を感じてしまう方も少なくありません。


東洋医学の「腎」と西洋医学の「腎臓」は別の考え方です

東洋医学と西洋医学の腎の違いを説明している鍼灸師

今から200年以上前、杉田玄白がオランダ医学の解剖書を翻訳し、
『解体新書』を発行しました。

その際、当時すでに使われていた
東洋医学の「五臓六腑」の名称を、
西洋医学の臓器に当てはめて翻訳する必要がありました。

これは、理解しやすくするための“翻訳上の便宜”によるもので、 東洋医学の考え方そのものが間違っていたわけではありません。

その結果、
「名前は同じだけれど、働きはまったく同じではない」
という認識が生まれるようになりました。

東洋医学でいう『腎』は、
単なる臓器ではなく、
生命力・成長・老化・生殖を支える大切な働きを持つ概念です。


東洋医学で腎の弱りを見つける方法

五行色体表からみる腎の弱り

五行色体表と腎との関係を示したイラスト

東洋医学には、万物を
木・火・土・金・水の五つに分類する五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)があります。

この考え方を用いると、
腎が弱ることで現れやすい体質や症状が見えてきます。

例えば、

・冬になると体調を崩しやすい
・髪の毛が細くなり、薄くなってきた
・耳の聞こえが悪くなってきた
・飽きっぽく、根気が続かない
・怖がりやすく、不安感が強い

これらは、いずれも腎と関係が深いと考えられています。


お腹(腹診)からみる腎の弱り

腹診で下腹部の状態を確認しているイラスト

東洋医学では、お腹の状態から
五臓(肝・心・脾・肺・腎)の働きをみる
腹診(ふくしん)という方法があります。

本来、お腹は赤ちゃんのように
ふっくらと弾力がある状態が理想とされています。

しかし、腎の弱りがある方は、
下腹部(おへその下)を触ったときに、
底なし沼のようにフカフカして力が入らない

状態になっていることが多く見られます。

お腹から体質を読み解く腹診とは?東洋医学の診察法を解説


東洋医学で考える『腎』の主な働き

腎は「精(生命力のバッテリー)」を蔵する

腎を生命力のバッテリーとして表したイラスト

精とは、成長・発育・生殖など、
生命活動の基礎となるエネルギーです。

分かりやすく言うと、
「生命力のバッテリー」「若さの源」のようなものです。

この腎の働きが低下した状態を、
東洋医学では「腎虚(じんきょ)」と呼びます。

腎虚は病名ではなく、体質や状態を表す東洋医学の考え方です。

▶腎虚(じんきょ)とは?腎の弱りによる体質や症状を詳しく解説


腎は原気(元気)の源になる

原気が充実し元気に過ごす男女

先天の精が変化したものを、
原気(元気)といいます。

原気が充実している人は、
下腹部に力があり、疲れにくく、活動的です。

逆に原気が不足すると、
疲れやすく、気力が続かず、病気になりやすくなります。


腎は水分代謝・骨・脳・耳とも深く関係する

下肢のむくみに悩む女性

腎の働きが低下すると、

・むくみ
・尿トラブル
・骨が弱くなる
・物忘れ
・めまい
・耳鳴り、難聴

などが現れやすくなります。


腎は「恐れ・不安」「やり抜く力」とも関係する

不安や恐れを感じている女性

腎は、感情面では
不安・恐れと関係があると考えられています。

また、「志(こころざし)」
=物事をやり抜く力とも深く関係しています。

不安感が強い方や、
集中力が続かない方は、
腎の弱りが背景にある場合も少なくありません。


腎の弱りに対する当院の鍼灸施術

元気に過ごしている男女のイラスト

東洋医学系の鍼灸院では、
病名や症状だけでなく、

  • お腹(腹診)
  • ツボの反応

から、五臓の状態を見極めて施術を行います。

そのため、

・めまい
・不安感
・動悸
・不妊
・腰痛
・検査では異常がない不調

といった場合でも、
腎の弱りが根本にあると判断すれば、
腎を整える鍼灸を行います。

腎を整えることは、
植物の根っこに水をやるようなものです。

元気に過ごしている男女のイラスト

生命力のバッテリーが少しずつ充電されてくると、
体だけでなく、心にも
「やり抜く力」や「安心感」が戻ってきます。

長引く不調や、
原因がはっきりしない状態が続いている場合は、
東洋医学の視点から体を見直すという考え方もあります。

腎の働きを整えることが、
体調を立て直す一つのきっかけになることもあります。

▶東洋医学で考える不妊と腎の関係|体の土台を整える考え方

慢性的な疲労や不安感が続く方へ|副腎疲労に使われるツボ

腎を整える食事とは?腎虚の方にすすめられる食べ物


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【参考図書】

  • 中医学ってなんだろう(東洋学術出版)
  • わかりやすい臨床中医臓腑学(医歯薬出版)
  • 東洋医学概論(医道の日本社)

おかだ鍼灸院 院長。

東洋医学(脈診・腹診)を中心に、
自律神経の不調や不妊(妊活)のお悩みを
25年以上臨床でサポートしています。

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