東洋医学系鍼灸院が行う腹診(ふくしん)とは?体の不調を読み取る7つのポイント

東洋医学の腹診で鍼灸師が患者のお腹を診て体の状態を確認している様子

「検査では異常がないと言われたけれど、辛さは続いている」

このような方が、当院には多く来院されます。

東洋医学では、お腹は体の状態を映し出す地図だと考えます。腹診(ふくしん)を行うことで、

  • 血液の流れ(瘀血の有無)
  • 免疫力の状態
  • 消化器や内臓の働き
  • 精神的な疲れ
  • 生命力(腎)の低下

など、体がどこで無理をしているのかを読み取ることができます。

ここでは、私の鍼灸院で実際に行っている腹診(ふくしん)の考え方と、7つの診察ポイントをお伝えします。


目次

  1. 腹診(ふくしん)とは
  2. 腹診でわかる7つのポイント
    1. 血液の滞り(瘀血・おけつ)がわかる
    2. 免疫力の状態がわかる
    3. 肝(東洋医学的な働き)の状態がわかる
    4. 消化器系(脾・ひ)の状態がわかる
    5. 心(精神活動)の状態がわかる
    6. 腎(生命力)の状態がわかる
    7. 肝門脈のうっ血(血流の問題)がわかる
  3. まとめ

腹診(ふくしん)とは

鍼灸師が腹診を説明している様子

腹診とは、お腹を触れることで体の内側の状態を読み取る、東洋医学の診察技術です。

実は鍼灸院には東洋医学系西洋医学系の二つのタイプがあります。

東洋医学系の鍼灸院では、腹診(ふくしん)・脈診(みゃくしん)・舌診(ぜつしん)と呼ばれる特殊な診察技術を行います。

これらの診察技術によって、西洋医学的な検査では「異常なし」と言われた不調でも、その原因の糸口を探ることができます。

腹診は占いではありません。体の声を、触れて確認する診察方法です。

当院では腹診とあわせて脈診も行っています。
脈診についてはこちら

腹診でわかる7つのポイント

1.血液の滞り(瘀血・おけつ)がわかる

腹診で瘀血(血液の滞り)が現れる下腹部の位置を示した図

確認する場所:お臍から斜め下付近

東洋医学には、瘀血(おけつ)という言葉があります。これは「血液の滞り」のことです。

瘀血を確認できる代表的な場所は、お臍から斜め下付近です。この場所を指で軽く押すと、瘀血が溜まっている方では硬さを感じたり、響くような痛みを伴うことがあります(※痛みを感じない場合もあります)。

なぜこの場所に瘀血が溜まりやすいのかというと、お腹の血管網が複雑になっている部位だからです。特に、帝王切開・婦人科疾患・虫垂炎などで下腹部を手術された方では、瘀血塊を触知することがあります。

東洋医学では、体の巡りが悪くなり、不要なものが停滞した状態と考えます。鍼灸では、この瘀血に対するアプローチ方法があります。

瘀血(おけつ)によって生理痛が起きているイラスト

この反応がある方に多い症状

  • 慢性的な体調不良が続いている
  • 生理痛や婦人科トラブルがある
  • 手術後から体調が戻らない

瘀血(おけつ)について詳しくはこちら


2.免疫力の状態がわかる

腹診で免疫力の低下が現れるお臍右側の位置を示した図

確認する場所:お臍の右側

お臍の右側を指で軽く押して、硬さや痛みを感じる場合、東洋医学的には免疫力の低下が示唆されます。

難経十六難(古代中国の医学書)では、お臍の右側は「肺」と関係があるとされています。肺は呼吸器系と深く関係し、免疫とも密接なつながりがあります。

風邪を引いたときに喉が痛くなるのは、扁桃(口蓋扁桃)が炎症を起こすためです。

扁桃は外部から侵入する細菌・ウイルス・微生物と最初に接触し、γ-グロブリンと呼ばれる抗体を産生する重要な場所です。

この抗体は病原体を無力化したり、貪食細胞の食作用を促して異物を排除する働きをします。これが「免疫」です。

肺の不調で免疫力が落ち喉が痛くなった女性

この反応がある方に多い症状

  • 風邪をひきやすい
  • 喉のトラブルを繰り返す
  • 体力が回復しにくい

▶ 扁桃について詳しくはこちら


3.肝(東洋医学的な働き)の状態がわかる

腹診で肝の働きが弱ったときに現れる不調を示したイラスト

確認する場所:みぞおちから斜め右下(期門・きもん)

みぞおちから斜め右下にある期門(きもん)というツボは、東洋医学でいう「肝」の状態を現します。

この場所を押して痛みが強かったり、硬くて指が入らない場合、肝の働きが弱っていると考えられます。

東洋医学で考える肝には、血を貯蔵し必要なところへ分配する働きがあります。

この働きが弱まると、筋肉のけいれん・目の疲れ・爪の状態悪化・肩こり・めまいなどが起こりやすくなります。

肝の働きの低下により目の疲れが起きている状態を示したイラスト

この反応がある方に多い症状

  • 肩こりや目の疲れが強い
  • 筋肉がつりやすい、けいれんが起きる
  • イライラしやすい
  • 爪が割れやすい
肝に貯蔵された血が不足し、歩き過ぎによって腰痛が起きた状態を示したイラスト

院長の臨床メモ 毎日7,000歩ほど散歩をしている方が、ある日知人と話しながら10,000歩歩いた翌日から腰痛を発症されました。東洋医学的に考えると、多く歩いたことで肝に貯蔵されている「血(例えるならガソリン)」を使い過ぎてしまい、筋肉に十分な栄養が届かなくなったと考えます。

東洋医学で考える肝の働きについてはこちら


4.消化器系(脾・ひ)の状態がわかる

腹診で消化器系(脾)の状態を示す位置

確認する場所:お臍

消化器系の状態を現すポイントは、お臍です。お臍を軽く押して、硬さや響くような痛みがある場合、消化吸収の働きが弱っている可能性があります。

難経十六難では、お臍の場所は「脾」と関係があるとされています。

東洋医学で考える脾には「運化作用(うんかさよう)」—食べ物を消化吸収し栄養に変える働き—があります。

この脾の機能が低下すると、体全体の栄養(気・血)が作れなくなり、さまざまな不調につながります。

東洋医学では「思い悩む」ことが脾を弱らせると考えます。体の疲れと精神的な疲れが重なっているケースが多くみられます。

脾の不調で食欲不振を起こした女性

この反応がある方に多い症状

  • 食欲不振・下痢
  • 倦怠感・やせやすい
  • 考えすぎて疲れている(思い悩む)

東洋医学で考える脾の働きについてはこちら


5.心(精神活動)の状態がわかる

腹診で心(精神活動)の状態を示す位置

確認する場所:みぞおち

みぞおちは、東洋医学でいう心(しん)の状態を現します。ここを押して痛みや硬さがある場合、精神活動のバランスが乱れている可能性があります。

東洋医学の「心」の働きには、思考・判断・感情・睡眠などの精神活動が含まれます。

また、「心は舌に開竅する(かいきょうする)」という言葉があるように、心の状態が舌にも反映されます。

この反応がある方に多い症状

  • 不眠
  • 動悸
  • 不安感・精神不安
  • 集中力の低下
  • 舌がこわばる感覚

東洋医学で考える心の働きについてはこちら
自律神経失調症と腹診についてはこちら


6.腎(生命力)の状態がわかる

腹診で腎の状態を示す位置

確認する場所:臍より下の下腹部

臍より下の下腹部が凹んでいたり、押すと軟弱な場合、腎の働きの低下を現します。

東洋医学で考える腎は、成長・発育・生殖・生命力と深く関係しています。「腰は腎の府(ふ)」「腎は耳に開竅する」という言葉があるように、腰や耳の症状とも密接なつながりがあります。

腎の働きの低下によって不妊が起きているイラスト

この反応がある方に多い症状

  • 腰が重だるい、力が入りにくい
  • 冷えやすい
  • 不安感・恐れの感情が強い
  • 耳鳴りや難聴
  • 不妊・妊活がうまくいかない
腎が弱くなり心が強くなり動悸を起こしたイラスト

院長の臨床メモ 医療機関でパニック障害と診断された方が来院されました。腹診を行うと、下腹部が軟弱で「腎」の弱りがはっきりと現れていました。鍼灸で腎の働きを整えていく中で不安感は徐々に軽くなり、最終的には仕事に復帰されました。

東洋医学で考える腎の働きについてはこちら
不妊・妊活の鍼灸治療についてはこちら
▶パニック障害と鍼灸についてはこちら


7.肝門脈のうっ血(血流の問題)がわかる

腹診で肝門脈のうっ血が現れるお臍左側の位置を示した図

確認する場所:お臍の左側

お臍の左側を軽く押して、硬さや痛みを感じる場合、肝臓への血流が滞っている可能性があります。

難経十六難では、お臍の左側は「肝」と関係があるとされています。西洋医学的にみると、この部位は下腸間膜静脈が集まり、肝門脈(かんもんみゃく)へとつながる場所です。肝臓内にうっ血や炎症があると、下流の静脈にも圧痛として反応が現れます。

この反応がある方に多い症状

  • 便秘
  • 食欲不振
  • 全身倦怠感

東洋医学で考える肝の働きについてはこちら

【参考文献】鍼灸臨床わが三十年の軌跡(医道の日本社)


まとめ

腹診でわかる7つのポイントをまとめます。

  • お臍から斜め下 → 血液の滞り(瘀血)
  • お臍の右側 → 免疫力の状態(肺)
  • みぞおちから斜め右下(期門) → 肝の状態
  • お臍 → 消化器系(脾)の状態
  • みぞおち → 精神活動(心)の状態
  • 臍より下の下腹部 → 生命力(腎)の状態
  • お臍の左側 → 肝門脈のうっ血

腹診は、体の声を触れて確認する診察方法です。

「なんとなく不調が続く」、その原因を探る大切な手がかりになります。なお、腹診の診方は流派によって異なります。ここでご紹介したのは、当院での考え方の一部です。

※本記事は東洋医学の考え方に基づく説明であり、病気の診断や治療を目的としたものではありません。

症状が強い場合は、医療機関を受診してください。


この記事をここまで読まれた方は、ご自身の不調と重なる部分があったり、なぜ腹診を行うのかを少し理解していただけたのではないでしょうか。

当院では、腹診・脈診を通して今の体がどのような状態にあるのかを確認し、その結果をもとに施術を行っています。

施術を受けてみたいと感じた方は、ご利用の流れをご確認ください。

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おかだ鍼灸院 院長。

東洋医学(脈診・腹診)を中心に、
自律神経の不調や不妊(妊活)のお悩みを
26年以上臨床でサポートしています。

岡田匡史(国家資格・鍼灸師)をフォローする

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