機能性ディスペプシアの鍼灸症例

機能性ディスペプシアの鍼灸治療の様子

【筆者】岡田 匡史(国家資格・鍼灸師)


検査で異常がない胃の不調でお悩みの方へ

検査で異常がない胃もたれや吐き気に悩む方が鍼灸師に相談しているイラスト

胃もたれ、吐き気、食後の不快感などが続き、
病院で検査を受けても「異常なし」と言われた。

薬を服用しているが、症状の改善を感じにくい。

このような状態でお困りの方が、
機能性ディスペプシアと診断されることがあります。

このページでは、
当院で行ってきた機能性ディスペプシアの鍼灸症例を、
実際の施術経過を中心に掲載しています。

症状の出方や回復のペースには個人差がありますので、
一例としてご覧ください。

※施術の効果には個人差があります。


このページの症例について

機能性ディスペプシアの鍼灸症例について説明している鍼灸師のイラスト

本ページに掲載している症例は、
来院時の状態、施術内容、施術経過をもとに記載しています。

症例によって、

  • 症状の強さ
  • 改善までにかかった期間
  • 施術の進め方

は異なります。

それぞれの症例を参考に、
ご自身の状態と重ねながらご覧ください。

機能性ディスペプシアの鍼灸症例④

吐き気と胃の重さで仕事に行けなくなった25歳男性


症例の概要(はじめに)

  • 25歳男性
  • 吐き気と胃の重さが続き、仕事に行けない状態
  • 朝の吐き気が特に強い
  • 病院で「機能性ディスペプシア」と診断
  • 鍼灸施術を継続し、8回目で仕事に復帰

※以下は、実際の施術経過を記録した内容です。
※施術の効果には個人差があります。


来院時の状態

来院日
令和5年8月31日

患者
25歳 男性

主訴
吐き気、胃の重さ

6年前に十二指腸潰瘍になった既往がある。
その後しばらくは落ち着いていたが、数年前から吐き気が出現するようになった。

特に朝の吐き気が強く、体調が悪いため仕事に行くことができない日が続いていた。

病院では「機能性ディスペプシア」と診断され、
別の医療機関では「パニック障害の可能性もある」と言われたことがある。


随伴症状

  • 喉の詰まり感
  • 立ちくらみ
  • 手足の冷え

吐き気だけでなく、自律神経症状を伴っていた。


初回施術時の所見

吐き気と胃の重さが続く機能性ディスペプシアの方にみられた腹部の反応点

脈の状態を確認すると、
交感神経の緊張が強く、全身が張りつめた状態であることがうかがえた。

腹診では、
お腹の複数箇所に圧痛がみられ、
触れるだけで不快感を訴える反応が多く出ていた。

このように腹部の反応が多い場合、
自律神経の乱れが強く関与しているケースが多い。

また、
血流や免疫の低下を示す反応も確認できた。


初回施術

自律神経の緊張を緩め、
血流と免疫の状態を整えることを目的にツボを選択し、鍼を行った。

施術後、
腹部の圧痛が軽減したことを確認し、
初回の施術を終えた。


施術経過

■2回目

吐き気、胃の重さ、喉の違和感は継続。
大きな変化はみられなかった。

施術内容は初回と同様。
自宅でできるお灸の方法を伝え、継続を勧めた。

■3回目

「吐き気が少しおさまってきた気がする」とのこと。
喉の違和感は引き続き残っていた。

施術内容は同様。

■4回目

「2日前に整体を受けてから、吐き気が強くなった」とのこと。

施術後には腹部の圧痛が軽減し、
施術直後は症状が落ち着いていた。

■5回目

「昨日は体調が悪かったが、今日は少しまし」とのこと。
症状の波がみられる時期。

■6回目

心の緊張を強く示す反応が続いていたため、
心実を抑えるツボを追加して施術を行った。

施術中に
喉の違和感や吐き気が軽減していく感覚があった。

■7回目

「前回の施術後から、吐き気と喉の違和感が減って楽だった」とのこと。

■8回目

「仕事に復帰できた」との報告。
以前と比べて体調はかなり安定してきた様子だった。

ただし、
電車で鍼灸院へ向かう途中に気持ち悪くなることがあり、
緊張や刺激に対する反応は残っていた。

■10回目

1か月ぶりの来院。
「体調は以前より良い状態を保てている」とのこと。

仕事も継続して行けている。

疲労やストレスが重なると
吐き気や胃の重さが再び出ることがあるため、
体の状態を維持する目的でメンテナンスの重要性を伝えた。

施術は継続中。


考察

初診時は、
自律神経の乱れが非常に強く、
腹部やツボに多くの反応が現れていた。

施術を継続することで、
これらの反応は徐々に減少していった。

自律神経のバランスが整い、
血流や免疫の状態が改善されたことで、
吐き気や胃の重さが軽減していったものと考えられる。

※施術の効果には個人差があります。

機能性ディスペプシアの鍼灸症例③

食後に関係なく胃の不快感・喉のヒリヒリ・吐き気が続いた38歳女性


症例の概要(はじめに)

  • 38歳女性
  • 食後に関係なく、胃の不快感・喉のヒリヒリ・吐き気が出現
  • 病院で検査をしても異常がなく、機能性ディスペプシアと診断
  • 施術後に腹部の反応が消失することがあり、経過とともに症状が軽減
  • 6回目の来院時には「最初の不調を10とすると0」とのこと

※以下は、実際の施術経過を記録した内容です。
※施術の効果には個人差があります。


来院時の状態

来院日
令和4年8月13日

患者
38歳 女性

主訴
今年の2月頃から、食後に関係なく
「胃の不快感」
「のどのヒリヒリ」
「吐き気」
などの症状が現れるようになった。

病院で検査をしても異常がなく、改善がみられないため、
何軒か病院を変えて受診していた。

診断名は「機能性ディスペプシア」と言われていた。

ある病院では、
「セロトニンが少ないから腹式呼吸やあくびをするように」
と言われていた。


初回施術時の所見

胃の不快感や吐き気がある方の腹診で確認された腹部の反応点

脈をみると、
交感神経の緊張により血流の悪い状態を表していた。

また、
鳩尾(みぞおち)と胃のツボを押すと圧痛があり、
心の不調・胃の不調を表していた。


初回施術

これらを改善するツボに鍼を行い、
第一回目の施術を終える。


施術経過

■第二回目

昨日、スイカを食べたところ気持ちが悪くなった。
今朝もその状態が続いていたため、おかゆを食べて来院。

お腹を指でやさしく押してみると、
鳩尾(みぞおち)と胃のツボに強い反応があった。

施術後には、その反応が消失。
自宅でもお灸をするように勧めた。


■第三回目

前回、施術を受けた後に吐き気がおさまった。
その後、3日間ほどは良い日が続いた。

しかし、その後また不調となり、市販薬を服用中。


■第四回目

胃の不快感・喉のヒリヒリ・吐き気などの不調が、
「最初を10とすると、2ぐらいに減った」とのこと。


■第五回目

昨日の夜から下腹部が痛くなった。
子供が風邪を引いて熱を出したため、
お腹にきたのかもしれないとのこと。


■第六回目

今日は、
「最初の不調を10とすると0」とのこと。

朝は、ご飯が食べられたと聞く。

施術は継続中。


考察

以前、機能性ディスペプシアは
「神経性胃炎」「ストレス性胃炎」
と呼ばれていました。

故・長野潔先生の著書
『鍼灸臨床 新治療法の探求』には、
臨床の立場から心経を観察すると、

  • 心臓を中心とした循環器疾患
  • 胃炎、胃潰瘍のある型
  • 神経症
  • リウマチ性疾患
  • 血圧の異常

などに深い関係を持つと記されています。

この症例では、
心の不調を整えたこと、
消化吸収に関係する「脾」の不調を整えたことが、
症状の改善につながったと考えられます。

ただし、
疲労の蓄積、季節や温度の変化、精神的ストレス、食生活などの影響を受けるため、
体調管理が必要です。

この女性の場合は早期の改善がみられましたが、
3か月、半年とかかる場合も多くみられます。

※施術の効果には個人差があります。

機能性ディスペプシアの鍼灸症例②

食後の吐き気と食欲不振が1年以上続き、体重が減少していた27歳女性


症例の概要(はじめに)

  • 27歳女性
  • 食後の吐き気、食欲不振、胃の重さが約1年間続いていた
  • 胃カメラでは異常なし、機能性ディスペプシアと診断
  • 薬や整体でも改善せず、食事量が著しく低下
  • 鍼灸施術と自宅でのお灸を継続し、徐々に食事量と体重が回復

※以下は、実際の施術経過を記録した内容です。
※施術の効果には個人差があります。


来院時の状態

来院日
平成30年11月10日

患者
27歳 女性

主訴
食後の吐き気
食欲不振
胃が重い
少量しかご飯を食べられない

約1年前より上記症状が現れる。

病院で胃カメラを行うが異常なし。
「機能性ディスペプシア」と診断され、
「アコファイド」を処方される。

しかし、
食後の吐き気・食欲不振・胃が重い・少量しかご飯を食べられない状態が、
約1年も続いていた。

固形物を食べると調子が悪くなるため、
春雨スープなどを中心に食事をしていた。

それでも調子の悪い時は、
水を飲んでも胃の不調が出てしまう状態だった。

体重も減少していた。

その間、
自律神経失調症をうたう整体院にも、
週に1回の割合で通っていたが、改善はみられなかった。

おかだ鍼灸院のホームページ
「機能性ディスペプシアの鍼灸症例①」を見て来院する。


初回施術時の所見

食後の吐き気と食欲不振が続く方にみられた腹部の圧痛部位

お腹の状態と脈の状態を確認したところ、

1.瘀血(おけつ)による内臓の循環障害
2.肝臓の弱り
3.脾臓の弱り

などの影響を受けて、
胃の不調が回復しにくい状態であることが分かった。


初回施術

これらを改善するツボに鍼を行い、
第一回目の施術を終える。


施術経過

■第二回目

来院日の昼食は、ブロッコリーを食べただけだった。
胃の症状に大きな変化はみられなかった。

瘀血(おけつ)の改善を重点的に行う。

施術後、
「お腹が少し空いた感じがする」とのこと。

自宅でお灸をするように勧めた。


■第三回目

食欲が少し出てきた。
胃のもたれも減ってきた。

便秘が気になるとのことだったが、
食事量が少ないため、過度に気にしないよう伝えた。


■第四回目

お茶碗に軽く一杯のごはんが食べられるようになる。


■第五回目

胃の具合は、
「6割ほど良い」とのこと。

ただし、
食後は少しスッキリしない感じが残っていた。


■第六回目

この日の昼食は、サケを食べたと聞く。

以前は、
ブロッコリーや春雨スープなどが中心だったため、
胃の具合が良くなってきていることが分かる。


■第七回目

調子が良くなってきたため、
正月に食べ過ぎて悪化しないか心配していた。

しかし、
本人が食事量に気をつけていたため、大きな問題はなかった。

胃の具合は、
「8~9割ほど良い」とのこと。

食後の胃のもたれもなく、
体重は2kg増えていた。


その後の経過

8か月後の7月10日には、
体重が5kg増え、以前の体重に近づいてきた。

お灸は、
自宅で毎日継続していると聞く。

※来院前は、
食後の吐き気・食欲不振・胃が重いなどの影響で、
体重が10kg減少していた。


考察

回復を阻害していた主な原因は、
症例①と同様に、
瘀血(おけつ)による内臓の循環障害を強く受けていた点である。

第二回目までは、
症状の変化がほとんどみられなかった。

しかし、
瘀血(おけつ)の改善に重点を置いて施術を行うようになってから、
徐々に症状の改善がみられ始めた。

また、
本人が自宅でのお灸を継続してくれたことも、
食後の吐き気・食欲不振・胃の重さ・少量しか食べられない状態の改善に、
大きく関与していたと考えられる。

※施術の効果には個人差があります。

機能性ディスペプシアの鍼灸症例①

食後の胃もたれと背中の痛みで外出できなくなっていた72歳女性


症例の概要(はじめに)

  • 72歳女性
  • 食後の胃もたれと背中の痛みが1年ほど続いていた
  • 検査では異常がなく、機能性ディスペプシアと診断
  • 薬では改善せず、日常生活への意欲も低下
  • 鍼灸施術を継続することで、胃の不調と背中の痛みが軽減
  • 外出や旅行にも行けるようになった症例

※以下は、実際の施術経過を記録した内容です。
※施術の効果には個人差があります。


来院時の状態

来院日
平成29年9月8日

患者
72歳 女性

主訴
食後の胃のもたれ
背中の痛み

約1年前から、
昼食を食べた後に胃のもたれと背中の痛みが起こるようになった。

背中の痛みは、
夜になると特に強くなっていた。

このような状態が続き、
寝込むことが多くなっていた。

「外出する気持ちもない」
「何かをやる気にもなれない」
といった精神的な落ち込みもみられていた。

病院で検査を受けたが、
特に異常はなく、
「機能性ディスペプシア」と診断された。

薬を服用していたが、
効果を感じられなかった。

以前、
都内の鍼灸院で治療を受けていた頃は体調が良かったため、
鍼灸で胃のもたれ・不快感・背中の痛みが楽になることを期待して来院された。


初回施術時の所見

食後の胃もたれが続く方にみられた腹診上の反応点

腹診により身体の状態を確認すると、

  • 免疫力の低下
  • 瘀血(おけつ)による内臓の血液循環障害

をうかがわせる反応がみられた。

これらの影響により、
食後の胃のもたれや不快感、背中の痛みが回復しにくい状態であると考えた。


初回施術

施術は、

  • 免疫力(慢性扁桃炎)の改善
  • 内臓の血液循環を良くすること

を目的としたツボを選択し、鍼を行った。


施術経過

■第二回目

背中が重い感じがある。
ガスが溜まりやすい状態もみられた。

症状に大きな変化はなかった。


■第三回目

昼食後に、
胃のもたれと背中の痛みがあった。


■第四回目

胃のもたれと背中の痛みが軽減してきた。

これまで、
「家から出たくない」
「やる気がしない」
といった状態だったが、
何かをしようという気持ちが出てきた。


■第五回目

最近、調子が良くなってきたため、
物置の整理をしたいと思い、実際に始めた。


■第八回目

泊まりがけで、
孫とディズニーランドに行くことができた。

完璧ではないが、
体調はかなり良い状態。

また、
旅行にも行けそうだと話されていた。

ただし、
急に動けるようになったことで、
日常生活の動きが増え、
身体に疲れが出ていた。


現在の状態

現在も、
体調管理を目的として施術を継続中。
(平成29年11月27日)


考察

扁桃病巣感染症の中には、
食欲不振・むかつき・腹痛などの消化器症状が現れることが知られている。

この症例では、
その影響により、
胃のもたれや背中の痛みが現れていた可能性が考えられた。

また、
瘀血(おけつ)による内臓の血液循環障害の影響で、
症状が慢性化していたと考えられる。

3回目までは大きな変化がみられなかったが、
4回目以降から、
身体の状態が急に好転していった。

1年間、
薬を服用しても改善しなかった不調が、
4回目で変化し始めたことから、
鍼灸の感受性が比較的高い方であったと考えられる。

慢性化した不調は、
1~2回の施術で改善するものではなく、
ある程度、腰を据えて施術を受けることが重要である。

※施術の効果には個人差があります。


検査で異常がない胃の不調が続いている方へ

機能性ディスペプシアは、
症状の出方や回復のペースに個人差があります。

当院では、
お一人おひとりの体の反応を確認しながら、
無理のない施術計画をご提案しています。

胃の不調を考えるうえで重視している「腹診」については、
以下のページで詳しく解説しています。
▶ 腹診について詳しくはこちら