この記事では、
なぜストレスが続くと自律神経が乱れやすくなるのかを、
「副腎」という臓器を通して解説します。
【記事改定日】2026年2月1日
【筆者】岡田匡史(国家資格・鍼灸師)
私達は生きていく中で、さまざまなストレスを浴びています。
例えば、
・会社や家庭などの人間関係
・寒さ・暑さといった気温の変化
・ケガや病気
・過労や寝不足
こうしたあらゆるストレスに対処する働きを担っているのが、
副腎です。
そのため、副腎は
「ストレスの腺」とも呼ばれています。
副腎は、腎臓の上に乗っている小さな
内分泌器官(ホルモンを分泌する器官)です。
副腎と自律神経の関係

特に、緊急的なストレスが加わると、
副腎髄質から
「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。
すると、
- 心臓がドキドキする
- 筋肉への血流量が増える
- 目(瞳孔)が開く
といった体の反応が起こります。
人前で発表をするとき、
試験会場に入ったとき、
会社の面接を受けたときなど、
このような経験をされた方も多いのではないでしょうか。
これは、
「戦う」か「逃げる」かを瞬時に判断できるようにする反応で、
太古の昔、危険から身を守るために備わった体の仕組みです。
この時、自律神経は
交感神経が優位な興奮状態になります。
ストレスが続くと起こりやすい体の変化

自律神経失調症と呼ばれる方の多くは、
ストレスによって、この交感神経の興奮状態が
長く続いてしまっているケースが少なくありません。
その結果、
- 動悸
- 息切れ
- 食欲不振
- めまい
- 肩こり、腰痛
- 吐き気、腹痛
など、さまざまな症状が現れることがあります。
一時的な緊張であれば問題ありませんが、
ストレスが慢性的になると、
体がうまく「休むモード」に切り替えられなくなることがあります。
鍼灸では、どのように副腎と自律神経に関わるのか

鍼灸では、副腎そのものを直接刺激するわけではありません。
体表のツボや反応点を用い、
とくに腎の経絡を中心に体の状態を確認しながら施術を行います。
その結果、緊張し続けている自律神経のバランスが整い、
副腎が過剰に働き続けない状態を目指します。
このような考え方で施術を行うことで、
交感神経の興奮が穏やかになり、
体が回復しやすい方向へ向かうと考えられています。
【参考記事】自律神経を整えるツボを見る
実際の施術例より

以前来院された方で、
2年ほど前から更年期の不調を感じるようになり、
整体に通われていた方がいらっしゃいました。
主な症状は、
首や肩のだるさでしたが、
- 動悸がするものの、検査では異常がない
- 胃腸の調子が著しく悪い
- 不眠が続く
- 気力が出ない
といった症状も重なっていました。
ご自宅では、
体調が悪く、寝込んでしまう日も多いと伺っていました。
脈を診ると、
速い脈(数脈/通常より速い脈)がみられ、
交感神経が緊張した状態が続いている様子がうかがえました。
また、腹診では、
瘀血(血の巡りが滞っている状態)による血流の滞りや、
肝の弱り(ストレスの影響を受けやすい状態)、
強いストレスの反応なども確認されました。
年齢的にも更年期にあたることから、
副腎へのアプローチを中心に、
その時々の体の状態に合わせた鍼灸施術を行いました。
施術後は、
「少し体が楽になるかな」という感覚はあるものの、
すぐに元のつらさに戻ってしまう状態を、
しばらく繰り返していました。
しかし、
良い時と戻る時を繰り返しながらも、
数か月、半年、1年と時間が経つにつれて、
体全体の調子が少しずつ安定し、
寝込むほど体調が悪くなる日はなくなっていきました。
このように、
自律神経や副腎の負担が長く続いている場合、
体の回復には
ある程度の時間が必要になることも少なくありません。
副腎は、更年期のホルモンバランスとも深く関係します

更年期になると、
卵巣の機能が低下し、
女性ホルモンの分泌量が減少していきます。
その影響で、
・めまい
・肩こり
・頭痛
・動悸
・ホットフラッシュ
・イライラ
・不安感
といった症状が現れることがあります。
同じ更年期でも、
症状が強く出る方と、
比較的穏やかに経過する方がいます。
その差の一因として、
副腎の負担状態が関与している可能性があると考えられています。
副腎は、
卵巣機能が低下した後も、
体内のホルモンバランスに関わる働きを担っています。
副腎と自律神経を、全体として整えるために

当院では、副腎への視点に加え、
自律神経と関係が深い「扁桃(喉)」の反応もあわせて確認しながら施術を行っています。
体の一部だけを見るのではなく、
体全体のバランスを確認しながら、
無理のない形で整えていくことを大切にしています。
▶副腎疲労を回復させるツボを見る
▶扁桃(喉)と自律神経を見る
まとめ
ストレスや更年期の不調は、
検査では異常が見つからなくても、
体にはさまざまな反応として現れることがあります。
症状をその場で抑えることだけでなく、
なぜ体がこのような状態になっているのかを確認しながら、
回復しやすい状態へ整えていくことが大切だと考えています。
副腎を整えることは、
ストレスに対する体の余力を保つことにもつながります。
副腎や自律神経の話を理解するうえでは、
東洋医学の基本的な考え方を知っておくと、
より全体像がつかみやすくなります。
【参考図書】
- 医者もしらないアドレナル・ファティーグ(中央アート出版社)
- 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい(SB新書)
- 鍼灸臨床 新治療法の探求(医道の日本社)
副腎や自律神経の不調について、
もう少し詳しく知りたい方は、
次の記事も参考にしてください。
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