東洋医学と西洋医学で考える肝は、似て非なるもの

【記事改定日】2026年1月28日
【筆者】岡田匡史(国家資格・鍼灸師)
東洋医学系の鍼灸院では、脈診・腹診・手足のツボの反応などから、五臓(肝・心・脾・肺・腎)のどこに負担がかかっているのかを見つけていきます。
それは、五臓の働きに乱れが生じることで、身体や心にさまざまな不調が現れると考えられているからです。
例えば、肝 の働きが弱くなると、
といった症状がみられることがあります。
そのため鍼灸師は、いろいろな診察方法を用いて、弱っている五臓を見極め、施術を行います。
「肝が弱い」と言われて不安になる方へ

患者さんに
「肝が弱っていますね」
とお伝えすると、
「肝臓の病気ですか?」
と不安に思われる方も少なくありません。
中には、
「病院で調べてもらったけれど、異常はなかったですよ」
と教えてくださる方もいらっしゃいます。
実は、東洋医学でいう「肝」と、西洋医学でいう「肝臓」は、似ているようで働きが異なるものです。
東洋医学の「肝」と西洋医学の肝臓の違い

今から200年以上前、杉田玄白らによって西洋医学の解剖書が翻訳され、『解体新書』が発行されました。
その際、日本で古くから使われていた
「五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎)」
の名称が、西洋医学の臓器名に当てはめられました。
その結果、
「名前は同じだが、働きはまったく同じではない」
という混乱が生じ、現在に至っています。
東洋医学で考える「肝」が乱れると現れやすい不調

鍼灸院には、
- めまい
- 生理痛
- 眼精疲労
- 肩こり
- 頭痛
- 腰痛
- 不眠
- イライラ
などを訴えて来院される方が多くいらっしゃいます。
これらの症状は、「肝」や「肝の経絡」の不調が関係して起きている場合があります。
ある女性のケース
以前来院された女性は、月経前から月経中にかけて、
といった症状がありました。
東洋医学では、これらの状態を「肝」の働きの乱れと関係づけて考えます。
なぜ「肝」が関係するのか
肝と精神作用の関係

東洋医学では、肝は「怒り」や「イライラ」といった精神作用と深く関係していると考えられています。
そのため、肝の働きが乱れると、感情が不安定になりやすくなります。
肝は筋肉と深い関係がある

昔から
「肝は筋を主る」
という言葉があります。
筋肉がスムーズに動くためには、肝に蓄えられた「血」が、必要に応じて筋肉へ十分に行き渡ることが重要です。
この働きがうまくいかないと、
- 肩こり
- 腰痛
- 膝関節痛
- 筋肉のこわばり
などが起こりやすくなります。
肝の経絡と生理痛

肝の経絡は、生殖器を通っています。
そのため、経絡の気血の流れが滞ると、生理痛や月経に関する不調が起こることがあります。
東洋医学における「肝」の主な働き

肝は気や血の流れを円滑にする
肝の気は、「活発」「動きが急で激しい」といった特徴があります。
古代の人は、この働きを軍隊を率いる将軍にたとえました。
この働きが乱れると、
- 胸部や脇、脇腹の張りや痛み
- 生理痛、月経周期の乱れ
- 気分の落ち込み、怒りっぽさ
などが現れることがあります。
肝は判断力や計画性などの精神活動を支配する

東洋医学では、五臓それぞれに精神作用があると考えられています。
肝の調子が悪くなると、
- 判断力が鈍る
- 計画的に物事を進めにくくなる
といった状態になりやすくなります。
肝は血を蔵する

肝には血を蓄え、身体が必要とする場所へ分配する働きがあります。
健康な方は、眠るときに血が肝に集まり、脳の血流が落ち着くことで自然に眠ることができます。
この調節がうまくいかないと、不眠につながることがあります。
肝は筋・爪・目に状態が現れる

- 肝の調子が良い → 爪にツヤと弾力がある
- 肝が弱る → 爪が割れやすい、変形する
また、
「肝は目に開竅する」
と言われ、肝と目は深い関係があります。
そのため、
- 眼精疲労
- 目のかすみ
- ドライアイ
などの症状も、肝の不調と関係することがあります。
※目を使いすぎると肝に負担がかかりやすいため、お仕事やスマートフォンの合間に、1分ほど目を閉じて休ませるだけでも、肝をいたわる養生になります。
肝と鍼灸治療について

東洋医学では、肝の働きの乱れが、さまざまな不調につながると考えます。
症状ごとに医療機関が分かれる現代医療とは異なり、
東洋医学では、身体全体のバランスを見ながら肝の働きを整えていきます。
当院では、手足のツボを中心に、身体に負担をかけない刺激で、気血の巡りを整える施術を行っています。
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【参考図書】
- 東洋医学概論(医道の日本社)
- わかりやすい経絡治療
- 鍼灸医学の理論と実践
