膝に水が溜まり、
・「抜くほどではない」と言われた
・何度も同じように腫れてしまう
・電気やマッサージではなかなか改善しない
このような膝の痛みでお悩みの方は少なくありません。
今回は、実際に当院に来られた方の症例をもとに、水が溜まった膝痛に使ったツボと、お灸の考え方についてお話しします。
水が溜まった膝の痛みで来院された女性の症例

【最終更新日】2026年1月23日
【筆者】岡田 匡史(国家資格・鍼灸師)
今年の5月に、膝に痛みを訴える60代の女性が来られました。
この女性の膝をみると、右膝が左膝に比べて腫れており、やや熱を持っていました。
お話を伺うと、特に強い原因は思い当たらず、自然に膝の痛みが出てきたとのことでした。
あまりに膝が痛いため整形外科を受診したところ、
年齢による骨の変形が少しあること、そして「膝に水が溜まっている」と説明されたそうです。
そして、
「この膝の水は、抜くほどではないから大丈夫」
と言われ、電気治療やマッサージを受けるよう指示されたとのことでした。
しかし、ゴールデンウイーク中に実家の田植え手伝いに行ったところ、さらに膝に水が溜まり、
・自転車をこぐ時
・寝返りで布団を蹴る時
・膝を曲げ伸ばしする時
に、強い膝の痛みが出るようになったそうです。
その後、友人の紹介で当院に来院されました。
膝の水は「悪いもの」ではありません

膝に水が溜まると、不安になる方が多いのですが、
この水は体が炎症を抑えようとする防御反応でもあります。
例えるなら、
炎症という「火事」を鎮めるために、体が出している「消火水」のようなものです。
火事(炎症)が続いていれば、水(膝の水)は何度でも溜まります。
そのため、水だけを抜いても、再び溜まってしまうケースが多いのです。
なぜ膝の水に「お灸」を勧めたのか

膝に水が溜まっていることをとても気にされていたため、自宅でできるお灸を勧めました。
「膝に水が溜まっているのに、お灸?」
と驚かれる方も多いですが、お灸で膝の腫れが引いていくケースは臨床ではよく見られます。
もちろん、強い炎症や感染が疑われる場合は、医療機関での処置が必要なこともあります。
ただし、何度も膝に水が溜まる方の場合、
「なぜ水が溜まる状態になっているのか」を整えていかないと、同じことを繰り返してしまいます。
膝に水が溜まった時に使うツボ|陰陵泉(いんりょうせん)

この女性には、陰陵泉(いんりょうせん)というツボに、毎日お灸をしてもらいました。
なぜ陰陵泉を使ったのか?

膝に水が溜まる原因の一つは、膝関節を包んでいる袋(滑膜)の炎症です。
陰陵泉には、
・滑膜の炎症を鎮める
・体内の余分な水分代謝を整える
という働きがあります。
東洋医学では、陰陵泉は「脾(ひ)」の働きを高める特効穴とされ、
体の中の余分な水分を処理する力を高めるツボです。
膝の水を無理に抜くのではなく、
体の中の「除湿機」を回すようなイメージで考えてください。
【重要】やってはいけないお灸の仕方
膝に水が溜まっていると聞くと、腫れている場所に直接お灸をしてしまう方がいます。
しかし、炎症を起こしている膝を直接温めてはいけません。
これは、火事に油を注ぐようなものです。
「痛い所」「悪い所」にお灸をするのではなく、
炎症を鎮めるツボを使うことが大切です。

(※台座灸のやり方は別記事で詳しく解説しています)
陰陵泉の見つけ方

陰陵泉は、膝の内側の下にあります。
・ふくらはぎの内側の骨のキワを
・足首から膝に向かってなぞり上げ
・指がピタッと止まるくぼみ
そこが陰陵泉です。
鍼灸師の教科書『経絡経穴概論』には、
「膝をたて、脛骨内側側縁を擦上して指のとまるところに取る」と記載されています。
経過と日常生活での注意点

この方の場合、最初の1か月ほどは炎症がなかなか引かない状態でしたが、2か月ほど経つと、ほぼ正常な状態に戻りました。(膝の水も吸収されました)
ただし、日常生活で膝に負担をかけている方は、負担を減らす工夫が必要です。
また、体重が重い方は、運動不足や食生活の改善も重要になります。
甘い物・せんべい類・お酒・清涼飲料水の摂り過ぎは、
東洋医学でいう「湿(しつ)」を生み、膝に水が溜まりやすくなります。
自宅でのお灸で改善しない場合
自宅でお灸をしても改善がみられない方は、
自然治癒力がうまく働かない状態になっています。
そのような場合は、
免疫・血液循環・自律神経・ホルモン・五臓六腑のバランスを整える
鍼灸施術が必要になります。


