東洋医学系の鍼灸院は、なぜ「お腹」を診るのか?

東洋医学の腹診で鍼灸師が患者のお腹を診て体の状態を確認している様子

「検査では異常がないと言われたけれど、辛さは続いている」このような方が、当院には多く来院されます。

東洋医学では、お腹は体の状態を映し出す地図だと考えます。
腹診(ふくしん)を行うことで、

  • 血液の流れ
  • 免疫力の状態
  • 消化器や内臓の働き
  • 精神的な疲れ
  • 生命力の低下

など、体がどこで無理をしているのかを読み取ることができます。

ここでは、私の鍼灸院で実際に行っている腹診(ふくしん)の考え方をお伝えします。


腹診でわかること

先生が腹診の説明をしているイラスト

腹診(ふくしん)で読み取れる主なポイント

・血液の滞り(瘀血)
・免疫力の状態
・消化器系の弱り
・精神的な疲労
・生命力(腎)の低下


1.腹診を行えば、血液の滞り(瘀血)がわかる

腹診で瘀血(血液の滞り)が現れる下腹部の位置を示した図

東洋医学には、瘀血(おけつ)という言葉があります。
これは簡単に説明すると「血液の滞り」です。

瘀血(おけつ)を確認できる代表的な場所は、お臍から斜め下付近です。

この場所を指で軽く押すと、
瘀血が溜まっている方では、硬さを感じたり、響くような痛みを伴うことがあります。
(※痛みを感じない場合もあります)

なぜこの場所に瘀血が溜まりやすいのかというと、お腹の血管網が複雑になっている部位だからです。

特に、
帝王切開・婦人科疾患・虫垂炎などで下腹部を手術された方では、瘀血塊を触知することがあります。

瘀血(おけつ)によって生理痛が起きているイラスト

この反応がある方は

・慢性的な体調不良が続いている
・生理痛や婦人科トラブルがある
・手術後から体調が戻らない

この瘀血は、単なる血行不良ではなく、体に不要なものが停滞している状態と考えられています。

鍼灸では、この瘀血に対するアプローチ方法があります。


2.腹診を行えば、免疫力の状態がわかる

腹診で免疫力の低下が現れるお臍右側の位置を示した図

お臍の右側を指で軽く押して、硬さや痛みを感じる場合、東洋医学的には免疫力の低下が示唆されます。

難経十六難(古代中国の医学書)では、お臍の右側は「肺」と関係があるとされています。

肺は呼吸器系と深く関係し、免疫とも密接なつながりがあります。

風邪を引いたときに喉が痛くなるのは、扁桃(口蓋扁桃)が炎症を起こすためです。

扁桃は、
外部から侵入する細菌・ウイルス・微生物と最初に接触し、抗体を産生する重要な場所です。

肺の不調で免疫力が落ち喉が痛くなった女性

この反応がある方は

・風邪をひきやすい
・喉のトラブルを繰り返す

体を守る力の弱りが、
腹部の反応として現れていると考えます。


3.腹診を行えば、肝(東洋医学的な働き)の状態がわかる

腹診で肝の働きが弱ったときに現れる不調を示したイラスト

みぞおちから斜め右下にある期門(きもん)というツボは、東洋医学でいう「肝」の状態を現します。

この場所を押して、
痛みが強かったり、硬くて指が入らない場合、肝の働きが弱っていると考えられます。

東洋医学で考える肝には、
血を貯蔵し、必要なところへ分配する働きがあります。

この働きが弱まると、

  • 筋肉のけいれん
  • 目の疲れ
  • 肩こり
  • めまい

などが起こりやすくなります。

肝の働きの低下により目の疲れが起きている状態を示したイラスト

この反応がある方は

・肩こりや目の疲れが強い
・筋肉がつりやすい
・イライラしやすい


院長の臨床メモ

肝に貯蔵された血が不足し、歩き過ぎによって腰痛が起きた状態を示したイラスト

私の鍼灸院に来られた方の中に、
毎日7,000歩ほど散歩をしている方がいました。

ある日、散歩の途中で知人に会い、
話しながら歩いた結果、
10,000歩ほど歩いたそうです。

その翌日から、腰痛を発症しました。

東洋医学的に考えると、
多く歩いたことで、
肝に貯蔵されている「血(例えるならガソリン)」を
使い過ぎてしまった結果、
筋肉に十分な栄養が行き渡らなかったと考えます。


4.腹診を行えば、消化器系(脾)の状態がわかる

腹診で消化器系(脾)の状態を示す位置

消化器系の状態を現すポイントは、お臍です。

お臍を軽く押して、
硬さや響くような痛みがある場合、消化吸収の働きが弱っている可能性があります。

東洋医学では、
脾は「消化吸収」「栄養を作る」働きを担っています。

脾の不調で食欲不振を起こした女性

この反応がある方は

・食欲不振・下痢
・倦怠感・やせやすい
・考えすぎて疲れている

体の疲れと、
精神的な疲れが重なっているケースが多くみられます。


5.腹診を行えば、心(精神活動)の状態がわかる

腹診で心(精神活動)の状態を示す位置

みぞおちは、
東洋医学でいう(しん)の状態を現します。

ここを押して痛みや硬さがある場合、
精神活動のバランスが乱れている可能性があります。

心は、
思考・判断・感情・睡眠などと深く関係しています。

この反応がある方は

・不眠
・動悸
・不安感
・集中力の低下

不眠や動悸など、自律神経の乱れが疑われる方に多い「お腹の拍動」については、こちらで詳しく解説しています。
▶【腹診】自律神経失調症で見られるお腹のサイン!


6.腹診を行えば、腎(生命力)の状態がわかる

腹診で腎の状態を示す位置

臍より下の下腹部が、
凹んでいたり、押すと軟弱な場合、腎の働きの低下を現します。

腎は、
成長・発育・生殖・生命力と深く関係しています。

腎の働きの低下によって不妊が起きているイラスト

この反応がある方は

・腰が重だるい
・冷えやすい
・不安感が強い
・耳鳴りや難聴
・不妊になりやすい


院長の臨床メモ(不安・パニックの例)

腎が弱くなり心が強くなり動悸を起こしたイラスト

医療機関でパニック障害と診断された方が来院されました。

腹診を行うと、
下腹部が軟弱で「腎」の弱りがはっきりと現れていました。

鍼灸で腎の働きを整えていく中で、
不安感は徐々に軽くなり、
最終的には仕事に復帰されました。


7.腹診を行えば、肝門脈のうっ血(血流の問題)がわかる

腹診で肝門脈のうっ血が現れるお臍左側の位置を示した図

お臍の左側を軽く押して、
硬さや痛みを感じる場合、肝臓への血流が滞っている可能性があります。

西洋医学的にみると、
この部位は下腸間膜静脈が集まり、肝門脈へとつながる場所です。

肝臓内にうっ血や炎症があると、下流の静脈にも圧痛として反応が現れます。

この反応がある方は

・便秘
・食欲不振
・全身倦怠感

文献:鍼灸臨床わが三十年の軌跡(医道の日本社)


まとめ

腹診は、占いではありません。
体の声を、触れて確認する診察方法です。

「なんとなく不調が続く」
その原因を探る、大切な手がかりになります。

※本記事は東洋医学の考え方に基づく説明であり、病気の診断や治療を目的としたものではありません。
症状が強い場合は、医療機関を受診してください。

この記事をここまで読まれた方は、

・ご自身の不調と重なる部分がある
・なぜ腹診を行うのか、少し理解できた
・体の状態を丁寧に確認してほしい
このように感じていらっしゃるかもしれません。

当院では、腹診・脈診を通して、今の体がどのような状態にあるのかを確認し、その結果をもとに施術を行っています。

施術を受けてみたいと感じた方は、ご利用の流れをご確認ください。

おかだ鍼灸院 院長。

東洋医学(脈診・腹診)を中心に、
自律神経の不調や不妊(妊活)のお悩みを
25年以上臨床でサポートしています。

岡田匡史(国家資格・鍼灸師)をフォローする