腹診(ふくしん)は、あなたの不調を解き明かす!

東洋医学系の鍼灸院は、腹診を行う

【最終更新日】令和5年10月4日
【筆者】岡田 匡史(鍼灸師)

どこの町にでも数件ある鍼灸院。

実は、「東洋医学系の鍼灸院」と「西洋医学系の鍼灸院」の二つのタイプがあります。

東洋医学系の鍼灸院では、「腹診(ふくしん)」・「脈診(みゃくしん)」・「舌診(ぜつしん)」と呼ばれる特殊な診察技術を行います。

この診察技術は、患者さんの回復を阻害する原因を見つける事ができます。

そのおかけで、検査をして異常がないと言われた不調でも、解決の糸口につながるのです。

西洋医学的な鍼灸院では、患者さんの苦痛とされる動作、解剖学的な筋肉の作用・トリガーポイントと呼ばれる遠隔部位に痛みを発症させるポイントなどを考慮して、患者さんの痛みの緩和・改善につながる施術を行っています。

テレビで、放映されている鍼灸治療を見ると、こちらのタイプが多いようです。

ここでは、私の鍼灸院で行っている【腹診(ふくしん)】と呼ばれる診察技術をお伝えします。

1.腹診を行えば、血液の滞りがわかる!

東洋医学には、瘀血(おけつ)という言葉があります。この瘀血(おけつ)とは、簡単に説明すると「血液の滞り」です。

この瘀血(おけつ)を確認できる場所は、お臍から斜め下付近に確認する事ができます。

この場所を指で軽く押すと、瘀血(おけつ)の溜まっている方であれば硬くなっていて、響くような痛みを伴います。(※痛くない場合もあります)

なぜ、この場所に瘀血(おけつ)が溜まってしまうのかというと、お腹の血管網が複雑になっている場所だからです。

特に、帝王切開をした方・婦人科疾患や虫垂炎で下腹部を切った方は、流れが悪くなっているので瘀血塊を触知します。

この瘀血(おけつ)と呼ばれる血液の滞りは、ただの「血行不良」ではないことを付け加えておきます。

新鮮な血液が滞っているのではなく、細菌・ウイルス等の毒素などが溜まっていると言われています。

この瘀血(おけつ)の影響で、体調不良の原因となっている方がいらっしゃいます。

鍼灸では、この瘀血(おけつ)へのアプローチ方法があります。

【参考記事】瘀血(おけつ)を知りたい方は、こちら

2.腹診を行えば、免疫力の状態がわかる!

お臍の右側を指で軽く押して、硬くなっていたり・痛みを生じる場合、東洋医学的には「免疫力の低下」が示唆されます。

なぜ、お臍の右側が、「免疫力の低下」と関係するのかというと、

難経十六難(古代中国の医学書)によれば、お臍の右側は、「肺」と関係があると言われています。

肺と言われるぐらいですから、呼吸器系と関係があります。

呼吸器系と「免疫力」が、どのような関係があるのか説明しますと、

あなたも、風邪を引いた時に喉が痛くなった事があると思います。これは、扁桃(口蓋扁桃)と呼ばれる場所が、炎症を起こしたからです。

この扁桃と呼ばれるところは、外部からの「細菌」・「ウイルス」・「微生物」に最も接触しやすいところであり、抗体と呼ばれるγ-グロブリンを産生する場所なのです。

そして、この抗体の働きは、病原体や毒素と結合して無力化させたり・異物細胞を溶解させたり・細菌や異物を取り込んで分解、消化する貪食細胞の食作用を促します。

これらは、免疫といって「生体が自己と異質な物質を識別して排除する現象」です。

このような事を考えると、扁桃の弱りは、免疫力と関係がある事がわかると思います。

そして、この免疫力の弱りは、お臍の右側に現れるのです。

【参考記事】扁桃について詳しく知りたい方は、こちら

3.腹診を行えば、肝臓の状態がわかる!

みぞおちから、やや斜め右下へ行くと「期門(きもん)」と呼ばれるツボがあります。

このツボは、肝臓の状態を現します。

期門を押して痛みを生じたり、硬くなって指が入らない場合、東洋医学でいう肝の働きが弱っていると考えられます。

この期門を押して痛い方は、「お酒」・「薬」・「サプリメント」の飲み過ぎている場合をみかけます。(※他の原因もあります)

なぜなら、肝臓の働きには、お酒・薬・サプリメントを分解する解毒作用があるからです。

たくさん飲み過ぎた為に、肝臓が疲れてしまっているのです。

もし、あなたが健康診断で肝機能に異常がなくても、いずれ肝機能に異常が現れる可能性を持っています。

なぜ、そのような事が言えるのかというと、

東洋医学では、「未病を治す」という言葉があるように、まだ病気ではないけれど、健康ではない状態を回復させる事を得意としています。

これは、健康ではない状態(五臓六腑の不調)を察知する能力の高い「予防医学」だからとも言えます。

なお、こられは東洋医学の考えに基ずくものであり、医師による診断や治療を否定するものではありません。

また、東洋医学で考える「肝」の働きには、血液を貯蔵して分配する働きがあると考えられています。

この働きが弱まると、「筋肉のけいれん」・「目の疲れ」・「爪の状態が悪くなる」・「肩こり」・「めまい」を起こします。

具体例

私の鍼灸院に来られた方の中に、毎日散歩(7000歩)をする方がいます。

その人は、散歩の途中に友達に会い、いつもより多く(10000歩)歩いてから、腰痛を発症しました。

これを東洋医学的に考えると、たくさん歩いた事により肝に貯蔵されている「血(例えるならガソリン)」を使い過ぎてしまった。

そして、筋肉に栄養(血)が届かず(足りなくなり)、腰の筋肉が引きつったと考えられます。

もし、あなたが上記のような症状で悩んでいるのなら、「肝」の働きが悪くなっているのかも知れません。

鍼灸では、「肝」の働きが良くなるツボを使って、これらの不調の改善に役立ちます。

【参考記事】東洋医学で考える「肝」の働きについて

4.腹診を行えば、消化器系の状態がわかる!

消化器系の弱りを現すポイントは、「お臍(へそ)」です。

お臍を指で軽く押して、硬くなっていたり・響くような痛みを生じる場合は、消化器系が弱っているとみてよいでしょう。

なぜ、この場所が消化器系と関係があるのかというと、

難経十六難(古代中国の医学書)には、お臍の場所は「脾」と関係がある事になっています。

東洋医学で考える「脾臓」の働きに、「運化作用(うんかさよう)」・「昇清降濁作用(しょうせいこうだくさよう)」というものがあります。

これをわかりやすく伝えると、食べ物を「消化吸収」し、「代謝・分解・排泄」をするという事です。

だから、このお臍を押して痛いという方の多くは、食欲不振・下痢・倦怠感・やせる・無気力である場合が多いのです。

食欲不振・下痢をするのは、消化吸収がうまくいっていないことを現し・倦怠感・やせる・無気力になるという事は、栄養(気・血)を作れていない事を現します。

また、この「脾」を弱らせる原因の一つに、「思い悩む」事です。

それは、考え過ぎると食欲がなくなる事からも、理解できると思います。

逆に、食欲がなくてお臍を押すと痛く感じるという事は、思い悩んでいる可能性があると客観的にわかります。

つまり、「精神疲労」を起こしているのでは?と考えられるのです。

私の場合は、このように考えて鍼灸施術を行っています。

【参考記事】東洋医学で考える「脾」の働きについて

5.腹診を行えば、心の状態がわかる!

「心」の状態を現すポイントは、「みぞおち」です。

みぞおちを指で軽く押して痛む場合や、硬くなって指が入らない場合は、「心」の働きが弱っている事を現します。

心の働きが弱っていると伝えると、心筋梗塞・狭心症などの心疾患を思い浮かべてしまう方が多いのではないでしょうか?

しかし、心疾患ばかりではりません。

精神不安・不眠・動悸・舌がこわばる・めまい・高血圧・リウマチ・頭痛・胃の不調を訴える方にも現れる事が多いです。

東洋医学の「心」の働きには、「精神活動」が含まれます。

心の状態が良いと、的確な判断を下したり・正しく思考する事ができるのです。

この為、心の働きが悪くなると、精神不安が現れたり・眠れなくなってしまうのです。

動悸が現れるのは、血を送り出す働きが上手くいっていない事を現します。

舌がこわばってしまう理由としては、「心は舌に開竅する」という言葉があるように、心の状態が舌に現れているからです。

このような具合に、心と関係のある症状が現れます。

また、「みぞおち」を押して痛む場合の反応は、体の上方に問題がある事を教えてくれます。

【参考記事】東洋医学で考える「心」の働きについて

6.腹診を行えば、腎の状態がわかる!

臍より下の方が、凹んでいたり・押してみると軟弱になっている方がいらっしゃいます。

これは、「腎」の働きが弱っている事を現します。

このような方の多くは、「高齢者」です。若い方でも、みかけられます。

東洋医学で考える「腎」の働きには、発育や成長・生殖などの「生命力」と関係しています。

高齢者の多くが、下腹部が軟弱になっているのは、「生命力」の低下を現しているのです。

また、不妊治療で人工授精や体外受精を行っても、妊娠しない理由の一つに「腎」の弱りが関係します。

これらの他に、関係のある症状は、耳鳴り・難聴・腰痛・怖がる(不安)・めまい・浮腫・喘息・冷え症等があります。

耳鳴り・難聴が腎と関係がある理由としては、「腎は耳に開竅する」と言われているからです。私の鍼灸院に来られた難聴と耳鳴りを訴えていた突発性難聴の方も、「腎」の弱りがありました。

腰痛と関係するのは、「腰は、腎の府」と言われているからです。

腎の弱りからくる腰痛は、何となく腰が重いような感じだったり・力が入りづらくなったり・長く立っているのがきつくなる症状が現れます。

怖がる(不安になる)理由としては、「腎」の働きに精神作用があるからです。特に、「恐れ」の感情と関係があります。

私の鍼灸院に来られた、医療機関でパニック障害と診断を受けた方の中には、「腎」の弱りがみられたケースもありました。

しかし、腎の働きが良くなってくると、不安感も徐々に減り仕事に復帰されました。

パニック障害の方でも、軽度で薬を服用したくない意思の強い方であれば、鍼灸で改善を実感される方もいらっしゃいます。

【参考記事】東洋医学で考える「腎」の働きについて

7.腹診を行えば、肝臓への血流状態がわかる!

お臍の左側を軽く押して、硬くなっていたり・響く痛みを感じる場合は、「肝臓への血流が悪くなっている事」と「肝臓の働きも弱っている事」を現します。

難経十六難(古代中国の医学書)では、お臍の左側は、「肝」と関係があると言われています。

西洋医学的にみると、お臍の左側は、「下腸間膜静脈」の多く集まる場所になっています。

この静脈は、どこにつながっているのかというと、肝門脈(かんもんみゃく)と呼ばれる静脈です。

この静脈は、肝臓へ行くのですが、肝臓内にうっ血・炎症があると下流の下腸間膜静脈にも「うっ血」が起こります。このうっ血は、お臍の左側に圧痛として反応が現れます。

つまり、肝臓へ行く血流が悪いだけでなく、「肝」の働きも悪くなっている事を教えてくれます。

肝門脈は、消化管や脾臓からの栄養物を含む血液を集めて、肝門を通る。肝臓で物質交換をされた後、再び大静脈となって心臓に戻る。
肝門脈は、上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・脾静脈が合流したもの。

以上が、私の鍼灸院で行っている「腹診」の一部をご紹介しました。腹診の診方は、流派によって異なる事を付け加えておきます。

※本記事は東洋医学の考え方に基づく説明であり、病気の診断や治療を目的としたものではありません。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関を受診してください。

【関連記事】

腹診と自律神経失調症
腹診:お臍の右側を押すと痛いのは何?
腹診:みぞおちを押して痛い時に考えられる症状